平尾桂子の研究室

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おもしろ日本語辞典

この際だから白状するけれど、私はかなり大人になるまで「カモノハシ」を「カモノツルハシ」と覚えていた。「ややこしい」を「ややこやしい」とも。

 

この問題はややこやしいですね、と言ったら、相手は一瞬目をぱちくりさせて、

「なんか、ややこしい言い方ですね」と言った。

 

多分、小さい時に脳みそのどこかが混線したに違いない。

 

「やぶきた茶」が「ヤキブタ茶」、「ビックカメラ」は「ビックリカメラ」に、「マリリンモンロー・ノーリターン」は「ノータリン」に読めてしかたがない(マリリンごめんなさい)。

 

こんな具合だから漢字の読みも推して知るべしで、今まで山ほど恥をかいてきた。

 

それでもどうにか大人になれた。これも周りの人々の寛容の心とご指導ご鞭撻のおかげである。

 

だから、「枯れ木も山のにぎわいだから、先生ぜひコンパにきてください!」と誘ってくれる学生を怒ったりしない。ハイハイ、枯れ木に花を咲かせてみせましょう。でもその言い方はやめた方がいいよ。

 

桃太郎のおじいさんが山に柴刈りに出かけた時、自分が里山保全の一部を担っているなんて考えもしなかったはずだ。というようなことを講義で話したら「どうしておじいさんは山に芝生なんか植えてたんですか」と質問に来た学生がいた。「しばかり」を「芝刈り」だと解釈していたらしい。

 

よかったね、今聞いといて。私も「うさぎおいし」は「兎が美味しい」と思っていたよ。

 

自分も間違いだらけだから他人の言葉遣いにあまり意見したくはないけれど、やはり気になる日本語がある。

 

ホームセンターの園芸用品売り場で見つけたスプレーにデカデカと印刷されたコピー。曰く 、

「人と自然にやさしい殺虫剤」

 

効能書きには「食品原料(ヤシ油、でんぷん)からつくられた人と自然にやさしい殺虫殺菌剤です」とある。有効成分はソルビタン脂肪酸エステル。乳化安定材としてアイスクリームやマヨネーズなどに古くから使われてきた食品添加物らしい。口に入れても安全という意味で確かに人には「やさしい」のだろう。でも、どうやったら「自然にやさしく」虫を殺せるのか。相手はハダニやアブラムシ。苦しませずに殺せますというのでもいうのだろうか。どういう仕組みで虫が死ぬのかは知らないが、「枯れ木」と言われるよりもひっかかる。

 

スプレーボトルを見ていたら「人と自然にやさしい核兵器」という言葉が浮かんできた。

 

どうしたら人や自然に本当に「やさしく」なれるのか。立ち止まって考えてみたい。

 

「悠+(はるかプラス)」2009年11月号 「砂場のダイヤモンド」

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平尾桂子 Keiko Hirao

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