平尾桂子の研究室

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バースデー・パーティーの舞台裏

しんあいなる マリー(麻里恵のこと)、わたしの バースデー・パーティーに  きてくれて どうもありがとう。
すてきな プレゼントも ありがとう。
あいをこめて  ローレンより

 

幼稚園のクラスメートの1人、ローレンのお誕生会におよばれしてから1週間後、彼女からこんな礼状が届いた。
アメリカに来て4か月め、麻里恵が初めて招待してもらったお誕生会だった。場所は屋内遊園地つきのピザレストラン。
約束の時間に麻里恵を連れていくと、ローレンが駆け寄ってきて抱きつき、「来てくれくれてありがとう!」
5歳にして立派なホステスぶりだ。
私はそこでバイバイ。その後、ピザとケーキをご馳走になり、人形劇を見てから乗り物で遊んだらしい。
さて、それからしばらくして、今度は麻里恵の誕生日が近づいてきた。アメリカで迎える初めてのバースデー。本人もローレンのパーティーのことが頭に残っているようで、「ぱーてぃする」と大はりきり。
じゃあパーティーしましょうね、とOKを出したまではよかったが、アメリカの子ども相手のパーティーって、どうすればいいのだろう?
そこで、大学院の先輩で2人の子のお母さんでもあるアンに、アドバイスをお願いすることにした。
以下、先輩ママから教わった「賢いパーティーの開きかた」をご紹介すると、

 

1.  招待状は2週間前に発送。 R.S.V.P.(ご返答請う)のあとに電話番号を。招待できない子の気持ちを傷つけないために、連絡は出来るだけ郵便でや りとりするようにとのこと。それから、招待できない子も楽しめるように、幼稚園のクラスにクッキーやカップケーキを差し入れするといいと言っていた。
2.  招待する人数の目安は、子どもの年の数。つまり、5歳の誕生日だったら5人まで。子どもの年齢が上がるにつれてホストとしてさばける人数も増えていく。ただし、これはあくまでも目安。
3.  テープや風船で部屋を飾り雰囲気を盛り上げる。アメリカ人が大好きな風船は、ちょっとしたパーティーには欠かせない小道具だ。ヘリウムガス入りのがスーパーで1個1ドルくらいで売っている。
4.  パーティー・フェーバー(おみやげ)と、皆でできるゲームを用意する。エンピツやシール、小さなオモチャなどを紙袋に入れておみやげに。ゲームはおなじみ椅子とりゲームなど。

 

「あ、それからね、パーティーの時間は1時間半くらいで切り上げるほうがいいわよ」と、最後にアンが言った。だが、この一言の本当の意味が分かったのは、ずっと後のことだった。
さて、初体験のアメリカン・バースデー・パーティーの顛末てんまつは——–

 

土曜日の午後1時。お母さんに連れられて「お客さま」が次々と到着。だが、ドレスアップした小さなレディーたちもすぐにワイルド・キッズに変身した。
「あたしがマリーの横にすわるの!」
「ちがう!あたしよ!」
テーブルの席順をめぐっていきなりケンカが始まった。ここでまずひと悶着。
♪ハッピバースデートゥーユーの後にローソクを吹き消し、ケーキご入刀。この時、今度はケーキの上に飾られたチェリーの配分をめぐってまたひとモメ。
ケーキとサンドイッチが終わったところで、プレゼントを開けてほしいという。
「マリー、あたしのを先に開けて!」
「ちがう!あたしのが先よ!」
「あたしのが先!」
これでまたひと波乱……。そのたびに汗をかきながらケンカの調停に腐心する夫と私。
バースデー・パーティーという「特別な日」なのだから、主役の麻里恵はもとよりすべての子どもたちにハッピーでいてほしい……。その思い入れが裏方ホスト(親)の気苦労を倍増させる。
ゲームで子どもたちの気を引き、なんとか無事に乗り切った1時間半後、お母さんたちがお迎えにやってきた。
「タイヘンだったでしょ?」
開口一番、そう言ってくれたのはナタリーのお母さん。ナタリーのパーティーにはピエロに扮した学生アルバイトを2人も応援に頼んだとか。
ピザレストランでにこやかにしていたローレンのお母さんも、本当はすごく気を遣っていたと、あとで打ち明けてくれた。
パーティー自体はタイヘンだったけどやっぱり楽しかったと今は思う。そして、私にとって最大の収穫は、このパーティーをきっかけにいろんなお母さんたちと急に親しくなれたことだった。

 

『Como』1993年4月号掲載

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