平尾桂子の研究室

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ピグマリオンの不思議

「この子は伸びる」

そう言われただけで、本当に成績が良くなってしまうという、ウソのような本当の話がある。1964年に行われた、ローゼンタールとジェイコブソンという心理学者の実験だ。

小学生の子どもにテストを受けさせたあと、20%の子どもを無作為に選び、「この子たちはここ1年で伸びる可能性がある」と担任教師に報告した。仕掛けはそれだけ。一年後に再びテストしたところ、その子たちの成績は本当に上がっていたという。

これは、女性の彫像に恋いこがれる思いが神に通じて石に命が吹き込まれたというギリシャ神話の逸話をもじって「ピグマリオン効果」と呼ばれている。

この実験結果にはいろいろな議論があるけれど、ちょっと周りを見回せばピグマリオンはたくさんいる。

「あなたなら、できる」と言われれば、ちょっと無理かなと思った仕事もがんばってやってみようと気にもなるし、「あなたでも(、、)、できる」と言われれば、どうせそんなものか、と手抜きをしたくなる。たった二文字違うだけなのに、結果として現れる「あなた」(=私)の能力は天と地だ。

「こうあって欲しい」という期待は人を変える不思議なパワーを持っている。その逆に、「こうなったらイヤだな」と思う不安は本当にイヤな事を呼び込む怖い力を持っている。

「今年は天中殺だから気をつけなさい」と忠告された人が、どんなに恐ろしいことが起きるのかと不安に苛まれ、疑心暗鬼のあまりノイローゼになり自殺してしまった、なんて、笑えない笑い話があると聞く。「あの銀行は危ない」というウワサから取り付け騒ぎが起きて、その結果銀行が破産する。「トイレットペーパーがなくなる」と言われて皆がスーパーで買い漁った結果、トイレットペーパーが店頭から消える。

世の中すべてが「気の持ちよう」とは言わないし、それで変わることも限られているかもしれないけれど、どうせ持つならポジティブな「気」を持ちたい。

さて、今月から新学期。人事異動やクラス換え、新入生も入ってくる。人間関係がリセットされるこの時期、私たち背負う役割やかけられた期待も一新される。

一月は行き、二月は逃げて、三月が去ったあとの、死ぬほど忙しい四月ではあるけれど、せっかくだから「なりたい自分」や「こうあって欲しい職場像」の棚卸しを提案したい。

周りの人に、そして自分にも、「あなたなら、できる」と、ゆとりを持ちながらプラスの期待を抱ける自分を目指したい。

 

「悠+(はるかプラス)」2009年4月号 『砂場のダイヤモンド』

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平尾桂子 Keiko Hirao

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