平尾桂子の研究室

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究極の趣味

「ご趣味は?」と聞かれると、とても困る。

 

料理は嫌いじゃないけれど、たいていは家事の一部としてやっているので趣味とはいえない。読書も好きだが、基本的に本を読むのは仕事だし、小説を読んでもコミックを読んでも、「これ、授業に使えないか」と、つい考えている。趣味は仕事と家事ですなんて、イヤミにしか聞こえない。

 

そんなわけで、人様に言えるような趣味を持ちたいとバイオリンを始めたことがある。3年くらいやってみて、そこそこの曲が弾けるようにはなったものの、弾けるということと聴けるということは別物で、自分と楽器が発する音の苦痛に耐えきれず、あえなく挫折した。

 

そもそも、人はなぜ他人の道楽を知りたがるのか。市販の履歴書には趣味の欄があるし、お見合いの席でも聞かれるらしい。余暇に好んでする習慣、これが趣味ならば、要するに「趣味」をキーワードに、相手の人となりを知りたいのだろう。

 

それならば、「健康管理」というのはどうだろう。何を食べて何を想い何をすれば自分の体がどう反応するか。水と炭素と若干のミネラルが材料の奇跡の小宇宙、これを観察し(できる範囲で)管理するのは楽しいに違いない。生きていること自体が健康に悪いのならば、アンチ・エイジングに走るもよし、筋トレに励むもよし。そういえば、「献血が趣味」という人がいた。血を抜くと悪いものが排出される感じがしてスッとするし、血液検査の結果も知らせてくれる。何より人のためになるのがいい、と。

 

「墓参り」も素敵だ。親や親戚、師や友人、恩を受けた人のことを忘れない人は誠実なのだろう。ついでに他の墓碑銘もたどる。直木賞を受賞した『悼む人』の主人公じゃないけれど、「誰に愛され、誰を愛し、何をして人に感謝されたか」に思いを馳せるのも決して悪いことじゃない。歴史に名を残した人の墓に参れば、史跡巡りにもなる。

 

でも、見合いの席でご趣味は?と聞かれ、「健康管理と墓参りです」なんて答えたら、「ご立派すぎて」と断られるに違いない。無難なところで「ジョギングと史跡巡りです」とまとめた方が、つまらないけど安全だ。

 

そんなことを考えながら、古くなったアイロン台を買い替えようとネットであれこれ検索していたら「エクストリーム・アイロンがけ」なるHPにたどり着いた。アイロンとアイロン台、それと発電機を担いで山(崖/高層ビル)に登り、極限状態でアイロンがけをする。たまらなく気持ちがいいらしい。これが立派な趣味ならば、「私の趣味は家事です」という答えもアリなのか。

 

みなさん、ご趣味は何ですか?

 

「悠+(はるかプラス)」2009年5月号 『砂場のダイヤモンド』

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