平尾桂子の研究室

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買物が救えない世界

「贅沢は敵だ」と言われたのは大昔のこと。

 

今や「贅沢は素敵」で、消費は美徳、いや、公徳でもあるらしい。

 

私たちが日常的にする「買い物」は、積もり積もって社会全体の消費を刺激し、経済を活性化させる。お金は使ってこそ生き、何倍にもなって働いてくれる。そんな経済の仕組みを教えてくれるのが、JCBのCMシリーズ「買物が世界を救う」である。

 

二宮和也がJCBカードで買った帽子がきっかけで、お笑いタレントにスカウトされ、それが巡りめぐって日本が石油大国になってしまう<HAT篇>と、同じく二宮がカエルの着ぐるみをインターネットで買ったことが引き金となり、あれやこれやといろいろあって、山奥で眠っていた徳川埋蔵金が発見されて景気が良くなる<カエルの着ぐるみ篇>。どちらも、「風がふくと桶屋が儲かる」のように、一見全く関係の無い出来事を、あり得なくはない因果関係の連鎖で無理矢理つなげ、それを15秒に凝縮した無茶苦茶なストーリーだ。だが、これだけスピーディーにテンポよくたたみかけられると、可笑しくって楽しくって、つい乗せられてしまう。

 

「買い物は、本人を元気にするばかりでなく、世の中を元気にする行為でもある」というのがJCBのメッセージ。不景気を吹き飛ばして世の中をハッピーにするために、もっともっと買い物をしましょうと。

 

逆に言えば、私たちが節約して買い物をしなくなると景気は低迷し、世界経済システムは破綻する。だから世の中のシステムを回すためにも私たちはお金を使い続けねばならない。

 

皿回しの皿が回り続けねばならないように、私たちも世の中のためにモノを買い続けねばならない。それを私たちは幸せと呼ぶのだろうか。本当に必要なモノの量は、私たちが思うよりもずっと少ないのかもしれないのに。

 

世界を救うことも大事だが、あふれるモノの洪水に溺れている私たち自身を先に救ってあげたい。

 

<JCB[買物が世界を救う]>

 

「悠+(はるかプラス)」2011年1月号 『15秒のスケッチ』

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平尾桂子 Keiko Hirao

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