平尾桂子の研究室

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運命のケータイ

音声を電気信号に変えて送り、これを音声に再生することによって通話する装置が電話機で、それを持ち歩いているから「携帯電話」。これがケータイの語源であることを、いつの間にか忘れていた。

 

それを思い出させてくれたのがDocomoのCMシリーズ「ひとりと、ひとつ」だ。「あなたには、あなただけのドコモを」というコンセプトで、擬人化されたケータイとその持ち主の関係が描かれ、渡辺謙が岡田将生の、木村カエラが堀北真希の、それぞれのケータイとして登場する。

 

渡辺は「仕事でもプライベートでも、いつだって彼のそばに私はいます」と、岡田のデートにもきっちりお供をし、仕事のグチを聞いたりコンビニの支払いを処理したりと、まるで忠実な執事のようにかいがいしい。それが彼の「役目」、いや「運命」だと誇らしげに語る。

 

一方、木村カエラは堀北の仲良しパートナーといった様子で、ヨガのレッスンやベッドの中までついてきて、彼女がハッピーな時も落ち込んでいる時も「いつも一緒」。堀北がシロップたっぷりのパンケーキを食べようとすると「食べ過ぎじゃない?」と一言注意。文字通り寝食を共にしながら、カロリー計算やエクセサイズのプランも含めて健康管理をしてくれる。

 

いいなあ、私もこんな「誰か」が欲しい・・・。

 

私の性格や好みを熟知し、私のグチを聞いてくれて、理解と共感とツボを押さえたアドバイスをくれる。さらに健康管理もお任せで、それでいて押し付けがましくなく出しゃばらない。まるで、私よりちょっと賢い私が、四六時中そばにいてコーチングしてくれるみたい・・・。

 

と、ここまで妄想が誘導されてしまうほど、画面に登場するケータイは魅力的だ。

 

だが、ケータイ業界は年に何度もモデルチェンジがある動きの激しい世界だから、「運命」によって出会った彼らの関係も、そうそう長くは続くまい。

 

もしかすると、このエッセーが活字になる頃には、かわいそうだけど渡辺謙も木村カエラも「たんすケータイ」になっているかもしれない。

 

<NTTドコモ、[ひとりと、ひとつ]>

 

「悠+(はるかプラス)」2010年10月号 『15秒のスケッチ』

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