二人の猫
両親と、息子・娘の四人家族。どこにでもいそうな家族だが、ちょっと変わっているのは、お父さんが犬だということ。
ご存知、ソフトバンクのCMに登場する白戸家だ。
最初放映された時には、「なぜお父さんが犬なのか」とずいぶん話題になったが、慣れというのは恐ろしいもので、これはこれで一つの家族の姿かもと世間が認知するようになった。犬のお父さんが中学教師で時々一人旅に出ること、学生時代は人間だったこと。徐々に明かされるストーリーの中では、きょうだいで肌の色が違うことなど瑣末なことに思えてくる。
どう見ても樋口可南子が犬を散歩させている風にしか見えない映像を、私たちは「夫婦の物語」と解釈し、犬が(偉そうに)しゃべることも、彼に馴染みのバーのマダムがいることも受け入れている。もしかしたら、シングルマザーの家族が、ペットの犬を「オトウサン」と呼んでいるだけなのかもしれないのだが。
今年届いた年賀状に「家族が増えました」とあるので、子どもが生まれたかと思ったら犬の写真が載っていた。ペットと一緒に入れるお墓が売れ行き好調だとか、国勢調査で「ペットはどこに書けばいいのですか」と調査員に尋ねる人もいると聞く。「ペットは家族」と考える人は確実に増えているから、「オトウサン」という名の犬がいても不思議じゃない。
かくいう我が家にも数ヶ月前、猫がやってきた。しかも二匹。(家族が増えて賑やかになりました。)どこかの車庫で生まれ、野良猫シェルターのボランティアに保護されたが里親探しが難航し、あちこちたらい回しにされた挙げ句、保健所送り寸前のところをもらい受けた。
予防接種のため、近所に開業した動物病院に電話をしたら、受付でこう言われた。
「はい、お二人ですね!」
待合室には「愛する我が子にも1年に一度は受診させてあげましょう」とある。
「人類みな兄弟」の実現よりも、動物と絆を結ぶ方が容易いのかもしれない。
<ソフトバンク、[ホワイトプラン][ホワイト家族24]>
「悠+(はるかプラス)」2010年5月号 『15秒のスケッチ』