お姫さまになりたい!

アメリカの子どもはカラフルだ。
肌や髪、目の色のバラエティーに加え、着ている服の色がなんとも明るい。ピンクと紫と黄色、緑とピンクと赤……、 反対色を組み合わせたショッキングな色使いが、みんな不思議とよく似合う。さらに女の子の髪飾りがピラピラと華やかで、そんな子どもたちがワイワイ飛び回 る幼稚園の教室はまるでお花畑だ。
自分の子どもが女の子なので、つい女の子にばかり目がいってしまうのだが、麻里恵のお友達のファッション感覚に、最初はずいぶん戸惑った。
仲良しのベスは、ピアスをしているし、ナタリーは真っ赤なマニュキアと指輪。ウエンディーは首飾りをチャラチャラさせてやってくる。日本だったら発表会にしか着ないようなドレスやエナメルの靴を、ふつうの日の幼稚園で見かけることだってまれではない。
彼女たちは麻里恵の幼稚園のクラスメート。ごくごくふつうの4ー5才児である。幼稚園での服装はまったく自由。アクセサリーやマニュキアですらOKのようだ。
そういえば、入園時に「服装や持ち物の規則は?」と先生に聞いて、けげんな顔をされてしまった。
「服装も持ち物も、マリー(ローマ字で書くとMarieとなるのでこう呼ばれている)の好きな物を」
かくして、毎日「オシャレができる」と大はりきりの麻里恵である。一緒にお昼寝をするぬいぐるみを、幼稚園に連れていけるのもうれしいようだ。
アメリカの子どもと体型が違うせいか、袖が長く胴まわりが細いこちらの服は、貸し衣装を着ているようで、今ひとつ彼女には似合わない。だが、幼稚園に通いはじめて4か月、毎日少ーしずつ、目に見えないアメリカの「におい」を体に染みつかせて帰ってくる。
アメリカの女の子たちは、とてもマセている。中学生にもなれば、バッチリお化粧をして男の子とデートを始める。大人のおしゃれのミニチュア版が幼稚園で流行るのも、そんな早熟さの反映だろうか。
アメリカの女の子たちの「かわいらしさ」は、性別を越えた「子どもらしさ」とはちょっと違って、ものすごく甘味が強い。ひらひらのドレス着た彼女達は、良く言えばフランス人形、悪く言えばデコレーションケーキ。
日本にいるころ、アメリカの友人がかわいいドレスを送ってくれたことがあるが、残念なことに、日本ではハデすぎて着せていく場所がなかった。結婚式のおよばれに一度袖を通したあとは、「お姫さまごっこ」の衣装として活躍した。
そんなヒラヒラドレスを子どもに着せて、アメリカの親たちがどこに行くかというと、週に一回、教会につれていく。日曜日の教会は、子どもをドレスアップさせて出かけるハレの場所でもある。
それにしても、アメリカの子ども服は安い。日本のミキハウスに相当するOshKosh*の製品が、せいぜい10-25ドル(1300円-3300円)だし、よそいきのヒラヒラドレスでも数十ドル(7-8千円)どまりだ。(キッザラス価格*)
もう一つ、子どものファッションで気がついたのは、キャラクター商品の種類が少ないことだった。
今一番ホットなのは、昨年10月末にホームビデオが発売された「美女と野獣」。アニメのシーンが印刷されたTシャツやトレーナー、靴下やタオル、布団や枕まである。
「リトル・マーメイド」の大ヒット以来、新作アニメをクリスマス・シーズンに公開し、そのキャラクター・グッズを、翌年の2月ごろから売り始めて、10月末のホームビデオのリリースで一気に盛り上げる、というサイクルで動いているらしい。
「美女と野獣」の、アニメとしてすばらしさは私も大いに認めるが、子ども服のキャラクターとしては、どことなくヤボったい。これがキャラクター商品の最右翼として子どもの世界に君臨できるのも、他にめぼしい競争相手がないからだろうか。
ファンシーグッズやキャラクター商品が溢れる「キティーちゃんの魔法の国」日本から見れば、アメリカはまだまだ「フロンティア」なのかもしれない。

 

OshKosh:
縫製とデザインの良さで最も定評のある子ども服ブランドの一つ。
キッザラス:
数年前日本に上陸して話題をまいたおもちゃの量販店「トイザラス」の子会社。
全米に支店を持つ子ども服専門店。

 

『Como』1993年2月号掲載

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